
ミラノ・コルティナ2026冬季オリンピックのスピードスケートは、最終的なタイムと順位だけを見てしまいがちな競技です。私自身も、以前は「結局は最後まで滑り切った結果がすべて」と思っていました。
ただ、レースをじっくり見続けるうちに気づいたのが、本当に強い選手は、スタート直後から最初の1周ですでに“違い”を見せているという点です。実は、後半の粘りや失速の有無は、ほとんどがこの1周目に詰まっています。
この記事では、スピードスケートをより深く楽しむために、「最初の1周」に注目すべき理由を整理していきます。
スピードスケートは「後半勝負」に見えて序盤で設計が決まる
スピードスケートは後半で粘れるかどうかを含めて、最初の1周でレースの設計がほぼ完成する競技です。
スタート直後は誰でも力を出せるため、差が出にくいように見えますが、実際にはこの時点で「この選手は最後まで持つか」「どこかで苦しくなるか」がかなりの精度で分かります。
理由は単純で、最初の1周はスピード・フォーム・リズムを同時に作らなければならない、最も難しい区間だからです。
ここで無理に踏みすぎると、脚に乳酸が溜まり、後半で必ずツケが回ってきます。逆に、速さを保ちつつも余裕のある滑りができている選手は、その後も安定したラップを刻めます。
「1周目が速い=強い」ではなく、1周目が整っているかどうかが重要だという点が、スピードスケートの奥深さです。
強い選手ほどスタート後にフォームが崩れない
最初の1周で特に注目したいのが、スタート直後からコーナーに入るまでのフォームです。
本当に強い選手は、スタートダッシュの勢いをそのまま滑りに持ち込まず、すぐに自分のリズムへと切り替えます。
具体的には、
・上体が早い段階で低く安定している
・腕の振りが大きすぎず、脚の動きと合っている
・コーナーでラインが外に膨らまず、氷を無駄に削っていない
こうした要素が揃っていると、見た目には派手さがなくても「スムーズで静かな滑り」に見えます。
一方、スタート直後から力任せに踏んでいる選手は、直線で速く見えても、コーナーでわずかな乱れが出やすく、その小さな乱れが後半で大きな失速につながります。
最初の1周は、単なるスピード勝負ではなく、技術と冷静さが問われる区間なのです。
1周目で分かるのはスタミナではなく「完成度」
誤解されがちですが、最初の1周を見て分かるのはスタミナの有無ではありません。
ここで見えてくるのは、その選手の滑りがどれだけ完成しているかという点です。
完成度の高い選手の1周目には共通点があります。
スピードが出ているにもかかわらず動きが静かで、氷を押す音やフォームに無駄がありません。コーナーから直線へ移る動作も自然で、次のストロークへと流れるようにつながっています。
逆に、「速いけれど苦しそう」「動きが大きくて忙しい」と感じる滑りは、エネルギー効率が悪い証拠です。
こうした滑りは、距離が伸びるほどタイムの落ち幅が大きくなります。
最初の1周で「楽そうに速い」と感じる選手は、ほぼ例外なく最後まで強いレースをします。
1周目が安定している選手はレースが崩れにくい
スピードスケートで安定した結果を残す選手は、1周目のラップが極端になりません。
速すぎず、遅すぎず、自分の持てる力を正確に使ったラップを刻みます。
これは単なる慎重さではなく、自分の限界とレース全体を把握している証拠です。
最初の1周をうまくまとめられる選手は、後半で多少苦しくなっても、フォームを大きく崩さずに耐えることができます。
五輪の舞台では、緊張や会場の雰囲気によって、普段通りの滑りができなくなる選手も少なくありません。
そんな中で、1周目から落ち着いた滑りを見せる選手は、結果以上に「強さ」を感じさせます。
まとめ
ミラノ・コルティナ2026のスピードスケートは、最後のタイムだけでなく、最初の1周を見ることで競技の奥深さがはっきりと見えてきます。
スタート後の落ち着き、フォームの安定感、無駄のないリズム。これらがそろった1周目は、その選手が完成された滑りを持っている証拠です。
オリンピックでスピードスケートを観戦するときは、ぜひ「最初の1周」に注目してみてください。レースの見え方が、これまでとは確実に変わるはずです。